Claude Code を中小企業の現場に持ち込んでみた話
「AI コーディングがすごいらしい、で止まっている」
中小企業のオーナーや個人事業主の方と最近よく話題になるのが、Anthropic 社の Claude Code です。
「AI コーディングがすごいらしいと聞いた」「でも自分はエンジニアじゃない」「業務自動化と言われても、何を頼めばいいか分からない」「医療や食品など、規制のある業種で AI を使って大丈夫なのか」。
問い合わせの内容を聞いていると、だいたいこのあたりで止まっています。
私自身、最初は「Claude Code はエンジニア向けのツールでしょう」と思っていました。実際、ツールを叩くのはエンジニアです。でも、業務に組み込んでみてから気付いたのは、ツールを叩く人と、何を自動化すべきかを決める人は別でいいということでした。
業務を一番よく知っているのは現場の人です。「ここの作業が地味にきつい」と言える人がいないと、自動化のネタがそもそも出てこない。逆に、現場側で「この作業をなんとかしたい」というネタさえ出てくれば、実装は私のような立場の人間が引き受ければよくて、現場側がエンジニアである必要はない、というのが今のところの実感です。
Claude Code が他の AI ツールと違うところ
Claude Code が ChatGPT や Copilot と感覚的に違うのは、AI が手元の PC 上で、ファイル読み書きとコマンド実行までやるところです。
「PDF を読んで、データを抽出して、Excel に書き出して、ファイル名を変えて振り分ける」という流れを、AI が自分でコードを書きながら実行して、エラーが出たら直すところまで 1 サイクルで回せます。チャットに「コードください」と頼んで、人間がコピペで実行して、エラーをまた貼って、というラリーが要らない。
地味な違いに見えますが、実際に使ってみるとこの差が大きいと感じます。「あとはエラーを直すだけ」という状態のコードが手元にあるとき、人間がやるべき判断と、AI に任せていい作業の境目が、思っていたより手前にあるということに気付かされました。
どういう作業が向いているか
実際に使ってみての感覚値で言うと、Claude Code が一番効くのは、繰り返しの定型作業です。具体的には、こんなあたり。
- PDF や Excel の仕分け・突合・転記
- 書類のデータ抽出 (請求書、申込書、計画書のたぐい)
- 定型メールや社内文書の生成
- 既存業務をつなぐ自動化 (会計ソフト、Slack、LINE など)
逆に、創造性が高い業務 (商品企画、対面接客) や、規制が極端に重い業務 (個別の医療診断、法的判断) は、最初から外して考えたほうがいいです。
「全部の業務を AI に任せたい」という相談はときどきもらうのですが、私は最初に「いったん候補を絞りましょう」と話を戻すことが多いです。月に 1 回しかやらない作業や、判断が高度な作業は、自動化しても費用対効果が出にくい。月数回以上やる、ある程度パターンが決まっている、規制が比較的軽い、という 3 つを満たすあたりが、最初の一歩としては現実的だと感じます。
都内のクリニックで試してみたこと
具体例として、都内のクリニックで試した話を一つ。科目は伏せます。
そこには、月次で書類の突合確認を、結構な数の PDF に対して、月数時間規模の手作業でやっている業務がありました。検出したいのは「書類同士の不整合」「説明日の順序の逆転」「署名漏れ」「重複登録」など、複数パターンの不一致です。
最初に院長と話しながら、どのパターンを検出したいかを言語化するところから始めました。「現場の感覚で気付いていること」を箇条書きにしてもらって、それを検出ルールに翻訳していくイメージです。ここはエンジニア側が一人で進めるのが難しい部分で、現場の方の協力なしには進みません。
実装には数週間かかりました。OCR の精度を上げるところで何度か行き詰まって、ローカル完結で動く別の OCR エンジンに切り替えたり、書類のレイアウトごとにパターンを分けたり、という地味な作業の積み重ねです。
最終的に、月数時間規模だった手作業が月数十分まで圧縮されました。9 割弱の削減です。誤検出の件数も同じぐらい減って、現場の方の確認負荷が大きく下がりました。
実装後も毎月の保守点検を継続しています。これは現場で地味に重要なポイントで、検出ロジックは作って終わりではなくて、書類のフォーマットが微妙に変わったり、新しいパターンの不整合が出てきたりするたびに、調整が必要です。「実装が終わったら自分たちだけで運用してください」という渡し方では現場が回らない、というのが、やってみてはっきりした学びでした。
規制対応は後回しにできない
医療現場で動かすときに、最初に院長と握っておいたのが、こんなあたりです。
- 本番の患者データはクラウド AI に送らない
- ログ出力にも患者情報を残さない
- 件数や存在確認はやっていいけれど、ファイルの中身を覗かない
開発の途中で、私自身がうっかり結果ファイルの中身を確認してしまいそうになったことが何回かあって、そのたびにルールを更新していきました。「個人情報を扱う業種で AI を使うなら、何を許可して何を禁止するか」を、ふわっとした「気をつけます」ではなく、具体的な禁止コマンドのレベルで言語化する必要があります。
これは規制対応というより、現場の信頼を失わないための最低限のラインです。後回しにすると、後から取り繕うのが難しくなる種類のものなので、最初から決めておくのが一番楽でした。
「導入したけど誰も使わない」を避けるには
これは Claude Code に限らない話ですが、自動化ツールを入れても誰も使わなくなる、というのが現場あるあるです。
避けるためにやっているのは、最後に必ず引き継ぎミーティングの時間を取ること。動作するスクリプトと運用マニュアルを納品して終わり、にしない。現場担当者と一緒に動かしてみて、「想定通りに動かなかったとき、何を私に伝えればいいか」まで実演する。
ここを省くと、半年後に「結局使ってない」と言われる確率が体感でかなり高くなります。実装の何倍もコストをかけたほうがいい工程だ、というのが、いくつか案件を回した上での結論です。
中小企業で使うときの料金感
Jean de Pain Studio では、Claude Code を業務に組み込むサポートを Audit / Lite / Full の 3 段階で受けています。
最初は Audit (監査) からというお客さまが多いです。Audit では、社内の繰り返し作業を 5-10 件ヒアリングして、それぞれの自動化の難易度・削減見込み・規制リスク・概算コストをレポートする、という形。「これは自動化に向かない」と Audit の段階で切る判断が、結局いちばんコストを節約します。
そこで「ROI が出る」と判定された 1-2 件を Lite で実装して、効果が出てから Full に拡張する、という順序にしています。詳細は サービス紹介 を見てください。
補助金で初期費用を圧縮できるケースもあります。経費区分まわりの話は別記事 (持続化補助金で Web 制作費を圧縮する話) に書きました。
最初の一歩は、3 つリストアップするところから
「Claude Code 導入相談」を受けるときに、最初に必ずお願いしているのが、月 30 分以上の繰り返し作業を 3 つだけリストアップしてくることです。
各作業について、頻度・所要時間・関与人数・入出力データ・規制が絡むかどうか、を雑でいいので書き出してきてもらう。これだけあれば、Audit に進む前の最初の打ち合わせがだいぶスムーズになります。
「社内の業務を全部洗い出してから相談したい」と言われることもあるのですが、それは Audit の中でやればいい話で、最初の入口の段階では 3 つで十分です。3 つあれば、Claude Code が向いているか向いていないかは、だいたい見えます。
Claude Code を業務に組み込みたい方は、contact@jeandepain.com まで気軽にどうぞ。先に 1 タスクだけ無料で試して効果を見る、という形でも受けています。LP 試作と同じノリです。